ライフキャリア・サポートのすすめ

笹川 孝一

笹川 孝一 (ささがわ こういち)

  • NPO法人ライフキャリア・サポート協会 理事
  • 法政大学 キャリアデザイン学部 教授

ポジティブなegoistになろう!

世界で最もしっかりした英語辞典とされる「Oxford English Dictionary (OED)」で「ego」「egoism」「egoist」という項目を引くと、およそ次のようなことが書かれている。 すなわち、私、私という意識、人の外部と内部の調整機能、感じること、思考、行動の基盤、egoがあれば主体となり、non-egoだと客体になる、それぞれのego=私を互いに尊重しあうこと、またそのように行動する人、
などである。

そして、egoismが一面化するとselfishになると付け加えられている。ここでは、基本的にネガティブなことは書かれておらず、「ego」「egoism」「egoist」は人生や個性にとって重要なこととして推奨されている。

しかし、英和辞典や英韓辞典を見ると、「ego」については、「自我」として調整機能などについて述べているが、「egoism」「egoist」は「利己主義」「利己主義者」と訳されている。そして、『広辞苑』を含む現代の国語辞典は例外なく、「利己主義」「利己主義者」を「他の人や社会の迷惑を顧みず、自分の利益だけを追求すること」「~する人」と解説している。

これは「selfish」「selfishness」と「egoism」「egoist」との意図的な混同である。そして、この混同の結果、日本人のほぼすべてが「エゴはいけない」「エゴイズムはいけない」「エゴイストは悪い」と思い込まされている。

現在、「日本の若者は自己肯定感が弱い」「日本企業は同質性のジレンマから抜け出せない」状態にあり、それが日本社会、企業、個人の危機だといわれている。その原因のかなりの部分は、「selfishness」と「egoism」の混同にある。

キャリアデザインについては、「自己概念が大事」「自己肯定感が大事」と言われている。それはその通りだが、問題は何がそれを阻害しているのか、どうしたらその通りになれるのか、だろう。江戸時代からの歴史的いきさつを踏まえて、福沢諭吉は「egoism」を「独立自尊」、「egoist」を「独立自尊居士」と訳し、夏目漱石は「個人主義」と訳した。

「egoism」も「個人主義」も全ての人のego=私を尊重しあい、だからこそそれが可能となる支えあい、社会づくりを目指すものである。 キャリアデザインは、職業人、家族の一員、地域人、楽しむ人など多面的であるとともに、職場や家庭、地域や多様なコミュニティー作りも欠かせない。そのためのライフキャリアのサポートのためには、「selfishな利己主義者ではなく、ポジティブなegoistになる」という心棒が、いま大切なのではないだろうか。

ライフサポート協会は、そのような技や知識や智慧を交換し合い、磨きあう場でありたいと願っている。

宮城まり子 様

宮城まり子 様

  • (前)法政大学キャリアデザイン学部
    法政大学大学院キャリアデザイン学研究科
    教授
  • 臨床心理士

推薦のお言葉

労働環境が大きく変化し、一人ひとりが組織に自分を預けることなく、自律的にキャリア開発を行い、現代社会の環境変化に適応し、自らを活かすキャリアをいかに形成するかは、総ての人の課題であり、だれもが模索しています。

長い人生の節目、節目においては、自分のキャリアの方向性について迷い、悩み、葛藤することがあるのは当然です。こうした時、キャリア領域の専門家によるサポートを受けることにより、今後の自己のキャリアの方向性を明確化することも可能でしょう。

また、組織は従業員のキャリアを支援し、人財として一人ひとりが「自ら育つ職場環境」を創ることが欠かせません。 こうした時代背景にあって、ライフキャリア・サポート協会は、キャリア開発やキャリア形成に対するコンサルテーションを通して、個人のみならず組織の支援を行うキャリア領域の優秀な専門家集団です。

ライフキャリア・サポート協会を担う皆さんの活動に大いに期待するとともに、心より協会の今後の大いなる発展を願い応援しています。